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付けんじゃねぇぞ?
「でしょう?魔女?留守番?そんなのどうでもいいよね?」
青年から同意を求められはしたが、応えて欲しい訳でないのはアスカにもわかる。見え透いた問い掛けで決め付けているのだ。答えを望んでいるはずがない。
「それを君と普通に出来るなんて思いもしなかった、そこが嬉しいんだ、君の中の人には耐えられないことだろうしね」
「俺の……中?」
アスカは声音を独り言のように響かせた。きつい口調で青年を刺激したくないのもあったが、水の精霊の言葉を信じての時間稼ぎにと、わざと小声にしたとも言える。
〝時が来るを待って〟
その時が今なのは確かと思うが、何をすべきかを知らされていない以上、アスカに出来ることは時間稼ぎしかない。
「俺は俺だぜ」
時間稼ぎというには程遠いとしても、胸の奥深くに女の魂が潜んでいると知ってからの思いに嘘は吐けない。それで気持ちを静めて、声音を低くし、諭すような気分でこう続けた。
「妙な因縁、付けんじゃねぇぞ」
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