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ぞっとするよ?
「僕の死は……」
そう続けた青年の声を聞いたと同時に、アスカの脳裏に、敵に向かって太刀を振るう男の甲冑姿が閃光のように映された。
「あの方によって迎えるべきもの」
そして屍を踏み越え、刃を血で濡らし行く様子が青年の賛美と共に感じ取れた。その恍惚とした意識を通して、謀反を起こした家臣の記憶が投影されたのだ。アスカにすれば、一瞬の光に映された男の勇猛さに惹き付けられはしても、青年の意識と繋がったことには我慢がならない。そうした思いで顔を顰めてしまったが、それが青年には前世の死から来る恐怖に思えたようだ。同情しながらも嘲りを滲ませ、話を継いでいた。
「わかるよ、不実な死程、悔しものはないからね、僕もそうだった、能力主義なあの方の奇特な施しがなかったなら、臣下になれはしない下賎な奴らに、仇討ちという偽善で命を奪われたのだもの、思い出しても……」
そこで青年は口調に憎しみを浮かべ、続けていた。
「ぞっとするよ」
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