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巡って来ない?
「てか……」
謀反を起こした家臣の魂には現世に対して未練がなかった。浮遊する理由がないのだから、行くべき場所へ行くのは当然の成り行きではある。としても、未練の強弱にかかわらず、暫くは現世の記憶に執着するという話でもある。それも次第に消えるそうだが、青年の言動を見る限り、少しも消えていないようにアスカには思えた。
「あんたさぁ」
アスカは青年に向けてわざとらしく声を掛け、そこに浮かんだ疑問を口にした。
「野郎に執着すんのは結構だがよ、そんなでさ、よくもまぁ転生出来たもんだ、どんな裏ワザ、使いやがったの?」
便宜的に霊媒を名乗るアスカだが、その本質は霊媒とは異なる。知識にも疎い。それでも転生に関しては、精霊達の喋りを通して知り得ていた。執着が消えたのなら、早々に来世へと向かえるが、囚われ続けたのなら、いつまで経っても来世の機会が巡って来ない。この程度の知識だが、青年が如何に異様なのかは示してくれている。
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