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疑いの余地は?
「そうだよ」
青年は秘密めいた微笑みと共に、顔付きを崩すことなく、甘ったるい声音であっさりと続けた。
「君と、ね」
「クソったれがっ」
アスカには今更な台詞だ。
「俺じゃねぇだろっ」
青年は転生を利用して、男と女、謀反を起こした家臣との因縁を遣り直すつもりでいる。それも男の魂が現世にあると思ってのことだ。ところが男はヴァンパイアに変異していた。誰よりも強く望まれたいと、忠義に徹して執着した華麗な姿そのままに、現世で生きていたのだ。となれば、必然的に青年の願いも変わって来る。男を天下人にと願った過去のように、モンスター界の王にと考えていそうな気もしたが、青年を前にして、そういった思いさえないのがアスカにもわかった。
〝これできっと、あの方が復讐の鬼となって、僕の前に現れるはず、とね〟
それでも青年のこの言葉が始まりにはなる。今こそ、胸の奥深くに女の魂を潜ませるアスカを餌に、男を釣る。そこに疑いの余地はない。
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