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面白がるように?
「てめぇ……」
アスカは軽く拳を握って続けた。
「寝ぼけてんのかっ」
同時に、青年のみぞおち目掛けて突き出した。一発くらい殴っておかないと収まらない気がしたからだが、加減はしてみせた。男同士で対峙しているというのに、母親似の顔立ちに女を投影し、余裕をかますような相手に本気になるだけ馬鹿らしい。それでも勢いのままに怒鳴り付けることはしてやった。
「俺は俺だってんだろ!」
霊媒の能力で前世を知ろうが惑わされず、自らの意思でさっさと手放せたのなら、因縁をはらんだ関係にあっても、互いに魂を高め合えたかもしれない。逆にかかわりを避けて、新奇な魂との出会いに向かえば、学びを得られたとも考えられる。そうした機会を青年はみすみす捨てたのだ。アスカとしても遠慮はしない。しかし、拳という現実を腹に受けてもなお、青年はアスカに女を見ようとする。
「同じだね」
痛みに顔を歪ませながらも、面白がるようにして、そう返して来たのだ。
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