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話ではある?

「君の可愛らしさがね」  アスカを追い詰めたと思っているのだろう。青年の口調は確信に満ちて、楽しげに響く。 「形は違っても同じだってこと、昔も楚々とした外見で周りを騙していたし、本当は野を駆け回りたがる粗野な女でしかないのにだよ、御台なんて呼ばれていたのも、あの方のご意向からだしね」 「で?」  アスカはむすっと返した。ちらちらと聞き知った過去を思えば、跳ねっ返りに映ったのは理解もするが、女の願いを男が叶えたに過ぎないことを、ねちねちと言われたくはない。 〝そなた……〟  しかも少年であった男が、少女であった女に掛けた言葉に始まる。 〝……の願いなど、余が……〟  そしてあの時、アスカが闇と光の狭間で目にした一瞬の情景は、少年が従者姿の少女をその身に寄り添わせていたものだった。そうした二人の睦まじさは、謀叛を起こした家臣に夜襲されるまで、変わりなく続いた。当然のように、今のアスカに言われる筋合いのない話ではある。

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