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言わせんな?
「くっそ、しつけぇ」
思ったままに、アスカは素直に呟いた。仕事着のロングドレスならいざ知らず、よれよれスウェットのどこに女の要素があるというのだろう。優秀な能力で女の幻想を描き出しているとしても、青年の独りよがりでしかない。実際に見えている訳ではないはずだ。〝落ちこぼれの用なし〟といったアスカの評判からすれば無理からぬことだが、アスカは自然界の精霊の庇護を受け、人間とモンスター、どちらにも影響を与えられる特別な能力者だ。青年の優秀さに迷わせられはしない。
「俺は俺だってんだろ」
それでもと、アスカは思い直した。青年に何を言われようが迷わないのが強みとするのなら、裏を返せば、嘘にしたい事実と向き合わされる弱みを負うことになる。女の魂が胸の奥深くに潜むのに嘘はない。その魂を表出させたがる青年に、ややもすれば根負けしそうになる。そこを押して、気持ちを高め、力強い口調でこう続けた。
「何度も言わせんなっ」
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