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信じてない?

 アスカが足で床を叩き始めた時、青年は引き気味に目を丸くしていたが、顔付きには余裕があった。アスカにしても、青年のような状況にいたとしたのなら、言い負かされた悔しさにとち狂ったとしか思わないだろう。そうした青年の余裕が、ヌシによって、その後どうなったのかを気にするのは間違っていないように思えた。 「現実じゃ、時間が止まってんだし……」  それが意識をまったき闇に移行させた一瞬というのはわかっている。となると、現実世界にとどまる青年を気にしてしまうのも当然なことだ。ヌシはクソガキらしく気配を消して、青年との遣り取りに聞き耳を立てていた。〝値千金の黄金の足〟を駆使するアスカも眺めていたが、するべきことをしたのかまでは判然とさせていない。 「肉体はまんまってもさ、魂はどうよ?」 「あはっ」  アスカの疑い深げな問い掛けに、ヌシは白けた調子で短く笑った。その口調のままに問い返しても来た。 「僕のこと、信じてない?」

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