989 / 996
脇に置き?
「っ……たれがっっっ」
悔しいが認めるしかなかった。ヌシのようにすんなりと、まったき闇から現実世界に戻ることがアスカには出来ない。自然界の精霊を頼るにしても、如何せん、気ままなところのある精霊達だ。のんべんだらりと、もっともらしい言葉で煙に巻き、高みの見物と決め込むのはわかっている。自力でどうにかするにしても、意識のみで存在する世界では、来た時のように〝値千金の黄金の足〟といった肉体を使っての物理的な行動は起こせない。
「なら……」
今回は逆に、水面へと泳ぐように意識すればいいような気がした。そうした考えで頑張ってみたが、闇を感じるばかりで視界という現実を目にするには至らなかった。
「ああ!クソ!」
取り敢えず、アスカは怒鳴って気持ちを落ち着けた。苛立っても仕方ない。まったき闇から抜け出すのが喫緊の問題だ。口を突いて出そうになるヌシへの罵詈雑言も脇に置き、周囲を探るような気分で闇に意識を向けてみた。
ともだちにシェアしよう!

