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逆らってみせて?

「……ってもな」  自力で頑張るにしても、まったき闇が別荘の下にあると知ってしまったせいか、水面へと泳ぐように意識すること以外、何も思い浮かばないでいる。物は試しと、もう一度意識を泳がせてみたが、同じだった。これといった変化は起こらなかった。 「クソっ」  現実世界では時間が止まっているのだ。焦る必要はないとわかっているが、長居をしたい場所でもない。気持ちはどうしようもなく苛立ってしまうが、それを抑えて、アスカは意識を横へと広げてみた。水面といえば上方に向かう感覚だ。横となると四方に向かわせるものに変わる。それもあってだろう。アスカにはうずくまる魂の数々とは別の何かが感じ取れた。直後に、混乱する青年の魂と認識出来た。  ずるずると地を這うような様子でアスカに近付こうとする魂には、未だ現実世界が色濃く残っている。安住するには、魂の数々と同様に闇に溶け入るしかないのだが、今のこの瞬間には逆らってみせていた。

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