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引っ張られた?
〝時が来るを待って〟
水の精霊にはこう言われていた。その言葉でアスカに全てをわかれというのだから、無体が過ぎる。
〝心配ない〟
こう続けられたのも、既に方法は伝えてあるという意味の促しだった訳だ。口数少ない自然界の精霊は、全くもって奥ゆかしくて忌々しい。
「で、なんであんたが?」
アスカはほんの少し、本当にほんの少し意固地になって問い掛けた。意識に響いた声が男のものというのは今更のことだ。確かめようとも思わなかったが、差し迫った状況においても、色気たっぷりなその声音に浮ついたのを知られたくはない。それで意固地になって、ふと思った至極真っ当な疑問で誤魔化させてもらうことにした。
「愚問ぞ」
男そのものといった返答に、誤魔化しがうまく行ったのを理解した。問い掛けの答えとしては馬鹿にされたというしかないが、そこを気にして、怒鳴り返す余裕がアスカにはなかった。不意に意識が強い力で引っ張られたように感じたからだ。
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