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アスカは喜んだ?

 男は続けた。自然界の精霊によって、取り分け闇の采配によって時間が停止した中、未だ腕を掴んで離さないアルファを引きずり、別荘の奥へと入り込んだことをだ。そして当然のように片足を上げて踏ん張るアスカと驚きに棒立ちしている青年を目の当たりにしたはずだが、二人の奇妙な停止姿に触れないのは上々と言えた。 「あやつ……」  男には瞬時に理解出来たに違いないからだろう。青年の中に魂がないことに、謀叛を起こした家臣の魂すら存在しないことに気付けないはずがない。 「木偶でしかなかった」 「ったり前ぇよ」  アスカは僅かばかり自慢げに、それでも不貞腐れたような口調で続けて行く。 「あんたさ、わかってなかったよな?ったく、半端な情報で頼みに来やがってよ」 「……うむ」  ヌシに考えが至らないとしても、男には思うところがあったようだ。謝罪するかのように頷き、アスカが話すのを静かに待つ。無論のこと、そうした殊勝な態度に、アスカは喜んだ。

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