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手に落ちて?

「……っ」  渋さの中にも甘さのある男の声音に動じたりはしない。そう胸のうちで強く思ってみても、アスカの口から熱を帯びた弱々しげな声が漏れ出てしまう。 「ク……ソっ」  どうにかこうにか悪態で誤魔化したものの、裏切り者のアソコが微少に揺れて、頑固に否定して来る。となれば、男の美声に何かしらの釈明を利かせ、おとなしくさせるしかない。そしてアスカは閃いた。甘い声音で囁かれたことに衝撃を受けたのではない。はっとする間もなく後ろに立たれ、そこにいるはずのない男に驚いただけのことなのだと。ヴァンパイアの瞬間移動を考慮しなかった愚かしさに腹が立ち、怒りに声が掠れたに過ぎないのだと。 「ふふん」  アスカは余裕ぶって鼻を鳴らし、ドアノブに伸ばした手をさらに近付けた。ところが指先が触れる直前で、男に先を越された。悔しいがドアノブは既に、洒落たスーツの袖口から伸びる男のヴァンパイアらしい白蝋気味の力強い手に落ちていたのだ。

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