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第23話(クリス)

外が見えないって、こうも息苦しさを感じるものなんだね。 たった数日のニューヨーク支部暮らし。オフィスキャンプ達人の僕が閉塞感を感じるなんて。 「地上に出て星でも見に行こうかな」 ライリーも夜空が見えなくて閉塞感を感じてるのかな? 壁一枚向こうにライリーが居る。 ライリー、君は今、何を考えてる? 君と一緒に星を眺められたらどんなに幸せだろうか? 誘う勇気はないけれど。 それに僕はいつも1人だ。慣れてる。 「今なら天気も良いしアンドロメダやペルセウスも見つけられそうだな」 ドアを開けると、右隣のドアも開いた。 「え?」 「あ!グラスゴー博士」 「こんな時間にどうしたの?」 「博士こそ」 「僕は眠れなくなったから、夜空を見に地上へ」 「僕も外の空気が吸いたくて」 こ こ これは誘うチャンス?! 「あ、あ、あアルゴル」 「え?」 「ペルセウス座のアルゴルが好きなんだ。子供の頃からいつも秋には夜空を見上げると探してて。アルゴルはアラビア語で「悪魔」を意味していて星の明るさが減光するから昔から最も不幸で危険な星とされてるけど、、、」 「僕もアルゴル好きですよ。アルゴルはB型の主系列星(主星)とK型の準巨星(伴星)からなる連星系だから主星が隠されると約2.1等から約3.4等まで暗くなる主極小が生じるんですよね?」 「そうそう軌道周期は約2.867328日でっ、、、、、、その、一緒に見に行かない?アルゴル」 「良いですよ、星の蘊蓄なら負けませんから」 「僕も量子物理学の次に天文学が好きなんだ」 「えー僕も医学部か天文学部か迷った時期あったんですよ」 僕たちはWIAニューヨーク支部の地上にあるカウムセット州立公園の1番小高い丘に向かった。 僕の持参した毛布を2人で羽織って、夜明けまで星の話に夢中になった。

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