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第49話(クリス)
人生、何が起きるか分からない。
僕の場合、それが突然の両親の死だったり、、、養父母の虐待だったり、、、
幸せだった人生を突然失う経験ばかりだった。
だから最悪の想定をする事には慣れている。
でも最高の想定には慣れていない。
「クリス」
信じられない。まだ夢の中?
「聞いてる?まだ寝てるの?」
チュッと額にキスが降ってきた。
「起きないと仕事でしょ?」
「起きてる。もう僕の副腎皮質ホルモンは十分に分泌されているはず。ただ僕は身体の生理的な覚醒を拒否してこのまま寝たふりをして君とずっと布団から出たく無いという精神的なっっっ」
今度は唇に柔らかいライリーの唇が触れた。
「ふふっ、このまま甘やかしたいけど遅刻しちゃう」
好きな人に好きになって貰えるなんて、本当に奇跡みたいだ。
優しい柔らかい笑顔のライリーは、本当に絵画に描かれた天使のように美しい。
幸せってこういう事なんだ。
そして多分、僕の人生で今が一番幸せな瞬間だろう。
だってまだ、この時の僕は知らない。
この先の人生がどうなるのかを。
深い深い闇を。
僕はまだ知らない。
END
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