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第10話
仕事が終わって部屋へ帰宅する。今日は動いたため汗が気持ち悪い。先に着替えることにする。
「あ。」
クローゼットを開けたところで黒いバケットハットがあることに気付く。
そういえばあのまま返していなかった。
振り返って時計を見ると8時。まだ起きているだろう。そう思って届けることにした。
結城の寮の部屋は相部屋で俺の部屋から3階降りた2階にある。
風紀委員長や風紀副委員長、生徒会長などの役職を持っている人は5階の一人部屋を与えられている。一人部屋なのはありがたいが5階まで上がるのは正直億劫だ。
「えっ、いない?」
「はい。帰ってきてないですよ。」
寮部屋のインターホンを押してでたのは結城と相部屋している子だった。
今日は途中から風紀室を開けなければいけなくて、そこで結城とは別れた。結城は「寮に戻るわ。」と言っていた。
「一度帰ってこなかったか?」
「あっ、はい。でも呼び出されたかなんかで出て行きました。」
何故か妙な胸騒ぎがする。
「そっか、ありがとう。これ返しといて。」
相部屋の子に半ば強引にハットを押し付ける。俺はそこから走り出した。
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