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第17話

 ドタバタと外から大勢の足音が聞こえる。 「けいた!」  葵の声だ。 「ここ!」  俺の声に気付いてトイレの方へ来た。  電車の中で、葵に連絡しといてよかった。  どうやら警察も呼んでくれたらしい。 「結城、これ着て。」 「ん?」  抱きしめてた手を離し、俺のブレザーを結城に着させる。離れる時に手で追ったのがかわいかった。  汚れた部分をティッシュで拭いて、ブレザーのボタンを全部閉め、ズボンも履かせた。  力が入らないのか、俺にもたれっぱなしだ。  ふと、疑問を抱いた。 「薬を盛られてないよな?」 「うん、大丈夫。」 「よかった。」  ぽんぽんと頭を撫でると笑顔を見せてくる。  その笑顔は一見辛そうな顔にも見えた。 「けいた、入ってもいいかい?」 「うん。いいよ。」  葵がゆっくりと個室トイレに顔を覗かせた。 「警官さん、こっちです。」  警官もこちらを覗く。  その瞬間、腕の中の結城がまた震え出した。 「大丈夫。」  あんなことがあった後だ。男の人が怖いのだろう。ましてや知らない大柄の人なんて。  警官達は、結城の様子を察してくれてか、帰って良いと言った。  タクシーを用意してもらい、二人で乗る。後は葵と警官がなんとかしてくれるだろう。  隣にいる結城は疲れて、安心してか、すやすやと寝ている。けど、掴んだ腕は離さない。 「ごめん。」  結城はまだすやすやと寝ていた。

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