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第18話
「ん。」
手の中のものが動いて顔をあげる。
「結城?」
「んん。」
結城はゆっくりと目を開ける。居心地が悪いのか身を翻す。もぞもぞとしているところで俺と目が合う。
「いいんちょ?」
寝起きの掠れ声で俺を呼ぶ。
「…ここどこ?」
目を擦った後、この場所が知らない場所だと気付いたのか聞いてくる。
「俺の寮部屋。こっちの方がゆっくり寝れると思って連れてきたけど、よかった?」
気のしれている人と相部屋とは言え、他人の物音は落ち着かないだろうと思っての行動だった。
服も俺のジャージに着替えさせてある。
「うん。大丈夫。ありがとう。」
まだ落ち着かないのかもぞもぞと身をよじって、掛け布団に包む。
「いいんちょの匂いがする。落ち着く。」
掛け布団の匂いを思い切り吸い込んでニンマリと笑顔を浮かべた。
黒い掛け布団に金髪がひょこっと出ているのが可愛い。
「んん。」
それでもまだ落ち着かないらしい。足元がもぞもぞしているのが掛け布団越しに見える。
もしかして俺がいるのが落ち着かないのか。
「俺、出ていくよ。ゆっくりしていて。」
「え。まって!」
背後でがさごそと動く音がして振り返る。
「あの、さ、触られた感触がまだ残ってて、気持ち悪くて、」
上目遣いで涙目で、シーツをぎゅっと握りながら、結城は続ける。
「だから、あの、いいんちょ」
真っ直ぐこちらを見る。
「たすけて?」
結城の頬は赤かった。
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