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第27話
ミカさんが仕事で家を空けると同時に俺たちも家から出た。
時計を見ると、まだ四時。帰るのには早いような気がする。
「ねえ、寄り道しない?」
結城も同じことを思っていたらしい。意見に賛同し、ここら辺に詳しい結城に任せることにした。
連れてこられたのは海辺だった。堤防に座って海を観る。近くの遊園地の観覧車が綺麗にライトアップされている。まだ夏前である今は夕焼け空がちょうど見える時間帯だった。
「夜風が、気持ちいいね。」
風に吹かれた髪を押さえながら結城はいう。海の匂いが良くて息を思いっきり吸う。
「うん。気持ちいい。」
「ねえ、」
結城は観覧車を指差しながらいう。
「あれ乗りたい!」
歯を見せて無邪気な笑顔で笑う。その笑顔に思わずつられて笑う。
「あはは。うん。今度行こうか。」
「ほんと?」
「うん。」
次は遊園地かぁ。と結城はニヤニヤする。いい家の出だから、遊園地もあまり行ったことがないのかもしれない。
「圭太。」
「ん?」
右を見るとさっきとは打って変わって、まっすぐな目をした結城がいた。
「おれ、圭太のことが好き。」
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