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第29話
「おれ、圭太のことが好き。」
嬉しかった。
両思いだなんて思っていなかったから。
結城のほおが熱っていて、唇が震えているのがわかった。
けど、目線は俺から外されない。
結城の精一杯の告白だったと気づく。
俺が無言でいたからか、結城は言葉を続けた。
「圭太と付き合いたい。」
"付き合いたい"
この言葉に俺は現実に引き戻された。
「ごめん。」
自分で思ったよりも低い声が出た。
瞬間、結城の顔は歪む。思わず頬に手を伸ばすが、顔を背けられる。俺が慰める資格なんてなかった。
すすりごえが聞こえても、俺はただ泣き止むのを待つことしかできなかった。
でも。結城は俺なんかと付き合っちゃいけない。
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