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第30話
「それで振ったんだ。」
「ああ。」
葵からの視線が痛くてコーヒーを啜る。
苦い。
「好きなんでしょ、結城くんのこと。」
「けど、俺とは付き合えはしない。」
「めんどくさいなあ。」
葵の言葉の棘が鋭い。
「圭太の中で答えは出てるでしょ。」
上品な笑みを葵は浮かべる。
「じゃなきゃ、そんないじいじしてないでしょうが。」
ああ、確かにそうだ。後悔している。
「圭太は言葉が足りないよ。」
「言葉?」
「ちゃんと言った?自分の"癖"のこと。」
「…あ。」
「ほら。ちゃんと理由を言わなきゃ結城くんは余計に苦しむよ。」
それに、と葵は続ける。
「圭太は結城くんの愛を舐めてるよ。」
「ごめん、葵。今から行ってくる。」
「いいよ。明日の仕事押し付けるから。」
どうぞご勝手にというように、知らん顔で葵は優雅にコーヒーを飲んでいた。
それを横目に見ながら部屋を出る。目的地は寮だ。
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