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第31話

ピンポーン  と、空気の読めない音が出る。  出てきたのは相部屋の子だった。 「あ、委員長。」  少し気まずい顔をされた。 「結城ですよね?」 「ああ。」 「それが…。あいつ部屋から出てこないんです。」  そう言って廊下の先にある扉を指す。 「何があったのか、ずっと出てこなくて。」  どうやら事情は知らない様子だ。あの日から出ていないのだろうか。 「扉越しでもいいから、話をしてもしたい。」 「あ、はい。じゃあ俺外出てますね。」  察してくれてか、気を遣ってくれてか。どちらにしろ優しい人だ。  靴を脱いで結城な部屋の前までいく。 コンコン。  ノックを2回。  中に人がいる気配も感じられない。 「結城。聞こえるか?」  ガタンッ 「ーー。」  何かが落ちる音がした、何かボソボソっと言っていたが聞き取れなかった。 「結城?」  返事はない。聞こえていることを信じて扉に話しかける。 「この間は、すまなかった。わけを説明せずにフってしまって。」 「……訳を説明して、また俺をフるの?」  ドア越しだが確かに聞こえたか弱い声。 「違う。聞いてもらって、それでも結城が付き合ってもいいって思うなら、付き合いたい。」 「…ん。」  「結城にだけ辛い過去の話をさせた。だから次は俺が話をする。」

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