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第32話
「俺、"癖"があるんだ。」
「癖?」
「うん。きっと世間一般的には同調されない。むしろ批判される癖。」
これを自ら打ち明けるのは結城が初めてだった。深呼吸して慎重に口を動かす。
「浮気癖があるんだ。」
「…へ。」
「一人じゃ足りないんだ。もっと多くの人から愛されたいと思ってしまうんだ。」
ひとりのひとから愛されても足りないと思ってしまう。それで昔から何股もしてしまっていた。
隔たれている扉に手を当てる。そこに結城がいることを信じて。
言葉にしなければわからないことを念頭に置いて、ゆっくりと他人に初めて話す事をことばにしだした。
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