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第50話

 「圭太、起きて。」  まだ慣れない呼び方で朝早くに起こされる。  「ん…。」  「朝食の時間もあるし、一度部屋に戻ろう。」  「ああ、そうだな。」  寝起きの悪い俺を引きずる形で宿泊部屋の方まで来る。  「じゃ、また後で。」  一度入ったはずの扉からひょこっと顔を出してそれだけ言うと、引っ込んでいった。  俺はそれに遅れて手を振って反応を返す。  がちゃんという音が聞こえた後、持っていた鍵を使って自分の宿泊部屋に入る。  結城はもう起きていた。  洗面所から歯ブラシを咥えたままの結城が出てくる。  結城は「おかえり」と言った後、無言でこちらを見る。  歯ブラシを口から離すと、  「よかったじゃん。」  とだけ言われた。  結城には全てお見通しのようだ。  「…ただいま。」  着替えを済ませた後、結城はルイに見せつけるように腕に密着しながら会食場へ向かった。  

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