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第4話
「で、なんで俺なの?」
入れてくれたブラックコーヒーを軽く飲んでから尋ねる。
「他に適任な人いるでしょ」
「ふーん」
俺は知りませんというように行儀悪く、コップの上側を持って啜るように飲む。
「葵とか」
その名前にわずかに眉毛が動く。
「葵のお姫様をみんなに見せるわけにはいかないだろ?」
「あー、はいはい」
溺愛っぷりに思わず苦笑いが溢れる。
付き合っていることを隠す気はないんだろうか。
「お前だって、恋人の姫姿、見せたいと思うか?」
変に言い訳しても無駄だと、無言で肯定する。
「じゃあ、小野は?あいつも綺麗な顔しているし、最近はルイと一緒にいることもあって人気も高いぞ?」
「あーダメダメ」
コーヒーカップを静かに置いて、足を組む。
「仮に小野が断ったら、葵がやるとか言い出すだろ?」
それも否定できない。
後輩思いな葵はしかねないと思った。
「それにあいつもナイトがいるっぽいしな。」
「ナイト?」
「ま、実際に見ればわかるよ。」
あとは説明が面倒だと言わんばかりに口を閉ざす。
「でも、だからといって俺にする必要は無いじゃん。」
「お前だってじゅーぶん、可愛いと思うぞ?」
俺が選ばれた理由は、面白がりたいからだな。今の反応を見てそう思った。
「しかも、相手は生徒会長様だし。」
相手役の野獣(王子様)は生徒会長だった。
まあ、あの傲慢な態度は役にピッタリだと思うけど。
「それは私情だろ」
「私情で配役決めたくせに。」
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