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第7話

「全員集まりましたね。では、台本の読み合わせ、始めましょう」  今日も今日とて、副会長に進行を任せてある。  「じゃあ、さらっと最初から。」  ちなみに副会長は魔女役だ。  序盤は魔女と王子のシーンで、出番がないまま進んでいく。  第二場面は俺の、ベルのシーン。  「朝の風景」という歌から入っていく。  生徒会の庶務の子がCDカセットのボタンを押して、メロディーのない曲がかかる。  んん゛と、少し使っていなかった喉を鳴らす。  元の声が高くないから、歌いづらいんだよなと思いながら、出だしを歌う。  「ここはー静かな町 いつも同じー朝 みんなー目を覚まーして呼びかけーる……」  ボンジュールと、他の生徒が続くはずなのに聞こえない。  不思議に思って、その生徒へ視線を向けると目線が合う。  「あっ、」  すぐに目を逸らされた。  気付けば、この部屋の視線が全て俺へ行っているような気がした。  「えっと…」  「…すみません。また曲の初めからやり直しましょう」  「あーあ、また圭太に惚れた子が増えたよ。」  葵が小さくつぶやいた。

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