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第10話

「ただいま」  通常の業務に加え、学園祭の業務、更には合同劇の練習でくたくたになって部屋に帰ってきた。  結局、早く帰ることはできなかった。  「あ、おかえり!」  その声が遠くから聞こえたと思うと、足音がどたどたと聞こえ、抱きつかれる。  胸に少しばかり痛みを感じながらも受け止める。  「お疲れ様」  ぎゅうぎゅうと引っ付かれた後、下から顔を出す。  「ありがと、ルイ。」  しゃがんでキスをする。  ルイが口を開けてきたけど、応える気力のなかった俺が舌を入れないでいると、ルイは大人しく口を閉じて、触れるだけのキスを楽しんでくれた。  膝立ちになっている俺に、ルイが頭を撫でてくれる。  「結城は?」  「疲れて寝てる」  それを聞いて今日は大丈夫そうだったと勘づく。  「ご飯は食べた?」  「うん、仕事の間に軽く」  「そっか、お風呂はどうする?」  「ん、シャワーだけ」  撫でられていると眠くなってきてルイの肩に顎を乗せてしまう。  「僕、圭太運べないよ。」  流石にここで寝るのはやめて欲しいのか引っ付きながら、俺たちのベッドへ行く。  ベッドでは、先に結城が寝ていた。  「結城先輩も待っていたんだけどね。」  そう言いながら、誘導されて寝かされる。  「お風呂入るの明日にしなよ」  「…ん、そうする」  ルイもそろりとベッドに入り込む。  「ルイは、文化祭なにするの?」  「縁日。みんなで浴衣着て、射的とか、サメ釣りとか、輪投げとか」  「そっか、楽しみにしてる」  近寄ってきたルイを抱きしめる。  「圭太って、眠くなると甘えるタイプ?」  「んー?」  ぼやけた頭では理解ができなかった。  「甘えるの、結城先輩が多いから、僕に甘えられて嬉しい」  「ん、どういたしまして」  「なにそれ」  その日はルイに抱きついたまま、制服のままで寝てしまった。

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