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その時は突然やってきた。(2)

ピンポーン…… 「はっ…はっ…はっ…はっ………くっっ!」 最後の一枚を手に取り、扱き上げた自分自身を、握り締めるように拭きあげてからチャイムの鳴った玄関へと、ズボンを調えつつ向かう。 「日配品のお届けでーす。」 「すみません、助かります。ドア前に置いてください。今アレなんで…」 「わかりました。合計五点お買い上げで、大きな箱が一つとビニール袋に一つまとめて置いてますので、すぐご確認ください!ありがとうございました。」 勝手知ったる配達員の遠ざかる足音を聞いて、ソロリとドアを開けて配達された品を、家の中に取り込もうとした時だった。 隣の人んちのドアが開き、また来るよとかなんとか軽い別れの挨拶と、ドアの閉まる音が聞こえてきた。 隣人はベータの男性一人暮らしで、彼女持ちだったようだから、特には問題視してなかったのだけど、出てきたのは隣人の客なのか、筋肉質で高身長のいかにもなアルファな雰囲気のする精悍な顔立ちの男性だった。 俺はといえば、相当な間抜けな格好を晒していた。 少し大きめの箱を下からよいしょと持ち上げる為に、隣人のドアに向けて尻を大きく突き出す格好で、相手を振り返って見上げてしまった。 軽く合わさる視線。 抑制剤を服用したとはいえ、発情初日の俺。 性欲うっすいとは言うものの、突然香ったスパイシーで濃厚なアルファの香りに、自慰で収めたはずの下腹が疼き始めた。 「「うっ」」 俺も相手も同時に同じ呻き声を発する。 ゴトっと箱を落としつつ、尻もちをつきジワジワと後ずさり逃げの体勢の俺。 「……織田さん。発情期ですか?」 見開いた眼が少し鋭くなって、俺を見ていた。その顔を見るが覚えはない。 ?! 誰だよ! 何で俺の名前知ってんだよ! 少しパニクりながらも、そうですとかなんとか。言ったような気もする。 この時俺は腰が抜けていて、自宅のドアノブにすがりついていた。 グレーのスウェットに尻からと前からと漏れ出た液でシミを作り、顔を赤らめ喘ぐ間抜けな俺を、そのアルファは顔色も変えず配達された品と俺を玄関の中へと入れた後鍵をかけ、震える俺を俺のベッドまで横抱きにして連れて行ってくれた。

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