5 / 35

報告(2)

とにかく、体調の悪さから平日に休暇を貰い妊娠が確定した今日。 今からすべきは、悠斗(はると)くんへの報告。 スマホのアプリからメッセージを送る。 すみません、仕事中。 終わってからで構わないので連絡ください。 ……すると五分もしないうちに、悠斗(はると)くんからの着信。 『どうしました?織田さん、体調どうですか?』 体調が悪く病院を受診する事は伝えていたので、心配してくれていた様子。 「はい、大丈夫です。すみません、仕事中に。終わってからでよかったのに。」 『いや、気になってそれどころじゃないから……病院どうでした?』 「……すみません、妊娠、してました。」 『あ……そうでしたか。』 「……はい。それで近い内にうちに来ていただけないかと。」 『もちろん伺います。今夜大丈夫ですか?』 「はい、助かります。すみません、呼び出しちゃって。」 それから軽く会話をして、電話を切った。 とりあえず連絡はした。 妊娠を報告した時の悠斗(はると)くんの返事が、微妙に落ち着き過ぎていて、もしかして喜んでないのかなー、そうかもなーと思いはしたが、悠斗(はると)くんは一目惚れと言ってくれてるし、俺は特に悠斗(はると)くんに不満もないし、結婚とか番とか、深くは考えてないのだけど、悠斗(はると)くんとならなんとかなる気がしてる。 歳下なのに凄く安心感のある人物なのは間違いない。 こんな優良物件、なんで俺のところに転がり込んできたんだろうか。 もちろん、もし妊娠を喜んでいないのならば、独りで産み育てるしかないのだが。 そうなればそうなった時だな。 なんて……普通妊娠でナーバスになるはずだろうに、呑気な両親に似たのか、楽天家の血筋を発揮していたのである。 気がかりは会社の事。 イレギュラーに妊娠してしまったから、営業職を手放して事務方に異動願いを出して、産休育休か。 はたまた育休からの営業職に復帰できるか。 辞めるという選択肢は今のとこないんだが、どうしたものかと考えながら、妊娠でやたらと眠い瞼に抗えず、ベッドでまどろむことにした。 まだ時間は14時。 妊娠してなくても眠くなる時間帯だ。 レースのカーテンだけひいて薄雲の日差しが、柔らかく包んでいた。

ともだちにシェアしよう!