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報告(2)
とにかく、体調の悪さから平日に休暇を貰い妊娠が確定した今日。
今からすべきは、悠斗 くんへの報告。
スマホのアプリからメッセージを送る。
すみません、仕事中。
終わってからで構わないので連絡ください。
……すると五分もしないうちに、悠斗 くんからの着信。
『どうしました?織田さん、体調どうですか?』
体調が悪く病院を受診する事は伝えていたので、心配してくれていた様子。
「はい、大丈夫です。すみません、仕事中に。終わってからでよかったのに。」
『いや、気になってそれどころじゃないから……病院どうでした?』
「……すみません、妊娠、してました。」
『あ……そうでしたか。』
「……はい。それで近い内にうちに来ていただけないかと。」
『もちろん伺います。今夜大丈夫ですか?』
「はい、助かります。すみません、呼び出しちゃって。」
それから軽く会話をして、電話を切った。
とりあえず連絡はした。
妊娠を報告した時の悠斗 くんの返事が、微妙に落ち着き過ぎていて、もしかして喜んでないのかなー、そうかもなーと思いはしたが、悠斗 くんは一目惚れと言ってくれてるし、俺は特に悠斗 くんに不満もないし、結婚とか番とか、深くは考えてないのだけど、悠斗 くんとならなんとかなる気がしてる。
歳下なのに凄く安心感のある人物なのは間違いない。
こんな優良物件、なんで俺のところに転がり込んできたんだろうか。
もちろん、もし妊娠を喜んでいないのならば、独りで産み育てるしかないのだが。
そうなればそうなった時だな。
なんて……普通妊娠でナーバスになるはずだろうに、呑気な両親に似たのか、楽天家の血筋を発揮していたのである。
気がかりは会社の事。
イレギュラーに妊娠してしまったから、営業職を手放して事務方に異動願いを出して、産休育休か。
はたまた育休からの営業職に復帰できるか。
辞めるという選択肢は今のとこないんだが、どうしたものかと考えながら、妊娠でやたらと眠い瞼に抗えず、ベッドでまどろむことにした。
まだ時間は14時。
妊娠してなくても眠くなる時間帯だ。
レースのカーテンだけひいて薄雲の日差しが、柔らかく包んでいた。
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