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はじまる
最初はお腹の張る感覚。
子宮全体がきゅうっと固く締まる感じ。
一時間に1、2回、気にも止めてなかったから40分とか30分の間隔だろう。
このくらいはこれまでも頻繁に張っていたので、どうとはなかったのだけど、腰のだるさやなんとなく身体の違和感があって、夕食後風呂に入り、リビングのソファでうとうとしていた。
悠斗 くんはこの頃毎日早い時間に俺のアパートに帰って来てくれていて、出産が済んだら同居を本格的に考えようと言ってくれている。
あぁ、またお腹が張り出した。
目をつぶって痛みに耐える。
「っ……う……」
さっき迄より間隔が短くなり、張りだけだったのに……少し痛みが出てきた。
我慢出来ずに思わず漏れた声に、風呂から上がった悠斗 くんが頭をガシガシ拭きながら反応した。
「あれ……優一さん?」
ソファに掛けながら俺の腰に手を当てる。
「……うん。検診から少しお腹が張っててね。今の、少し痛かった。」
「そうなんですね……今のから時間はかりましょうか。」
そう言って壁の時計を見上げる悠斗 くん。
その時の時刻は21:34
次に張りを感じたのは約20分後だった。
まだまだ余裕があって、テレビを見たり悠斗 くんと、出産してからの今後について話したりしていた。
「マンションと戸建てどっちがいいですか?」
「……?借りるの?」
「いえ、賃貸じゃないです。今は仕事の都合で別居してますけど、そろそろ準備も整ったので出産が終わったら優一さんと住みたいです。いくつか候補がありますので、出産が終わったら一緒に見てくださいね。」
「……どれ位の予算?俺の月給安いから、あんまり協力出来ないかも…。……っつつ!いたっ!」
「大丈夫ですよ。優一さん、ほら、ふー、ふー。」
悠斗 くんが俺の腰を擦る。
一緒に呼吸を調えてくれる。
さっきの陣痛から15分。
短くなってる。
しかもあからさまに痛い。
クッションに抱きつく形でソファに横になっている。この体勢から動けない。
まだまだ22時を少し回った時刻。
深夜に突然電話の一報よりまだマシかと思い、病院に電話をした。
これまでの張りとは異なる事、予定日超過を伝えると、10分を切って痛みが継続するまで自宅待機となった。
逆に10分を切るような間隔になれば、深夜でも来院してと。
長い夜の始まりである。
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