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番の印をつけるまで(7)
※
俺を優しく抱きしめて、囁く悠斗 くん。
「覚悟はいいですか?」
「もちろん。」
間髪入れずに即答する。
啄 むようなキスが降ってくる。
額、鼻先、右瞼、左瞼。
どうやら少し涙が出ていたのか。
舐め取られるような仕草だった。
この一週間程部屋から出ない生活で、俺はTシャツに短パンという色気のない恰好。
悠斗 くんは仕事帰りのスーツで、ネクタイを外しただけだった。
俺がジャケットのボタンを外そうと手を延ばすが、俺の手を優しく払い執拗に顔中にキスをしながら悠斗 くんは自分でボタンを外し、そのまま背中に手を回してジャケットを脱いだ。
キスは継続中。
今度はワイシャツの小さなボタン。
俺の覚束無い手じゃ外せない程小さなボタン。
ぷちっ、ぷちっ、と片手で器用に全て外すと、一際濃厚なキスを落としてくれる。
またキスの合間に、肌着代わりの白のTシャツもガバッと毟 るように脱いだ。
舌を絡めてくるから、応えていると、酸欠になってきた。
わかってる。鼻で息しろって言うんだろう?
麻痺して忘れちゃうんだよ。
「んはっ……はぁっ。」
軽く喘いでもう一度ディープなキスを。
頭を撫でてくれる手が気持ちいい。
悠斗 くんの上半身は裸に。
俺も。
Tシャツを捲 る。
唇が一瞬離れるのを待って、首からシャツを引き抜く。
俺からTシャツを取り上げポイと床へ投げた。
指でズラした短パンとボクサーパンツを両膝をばたつかせて下へずり降ろす。
ベッドから落ちていく短パンとボクサーパンツ。
お互いの鼻息と衣擦れだけが寝室に響く。
相当貪って、わけも分からなくなりかけた頃、悠斗 くんが次のモーションへ。
次に悠斗 くんが目を付けたのは、俺の右胸。既に出産を経験し、息子に吸われた胸だ。
間延びした乳首なんて、見られたくない。
「いやっ……はず…かしいからっ!」
身を捩るがビクともしない。
悠斗 くんの顔を見ると、無表情で俺の胸を視姦している。
じっくり見て……かぶりつくようにクチを開けて迫る!
音を立てて吸い込む。
もうミルクなんて出ないのに。
なんのプレイだよ。
コロコロと舌で弄っているとそこも甘い痺れとなって下が疼く。
左胸も同様だ。
さっきのキスといい、貪り方が執拗だ。
ここまでに、俺の下半身は全く触れて貰えない。
今までの行為の中で、俺は悠斗 くんの服も雄にも、自分の股間にも手を延ばそうとしたのだが、その度に軽く払いのけられてしまった。
まだ、触るな!
という事だろうか。
俺はマグロになって、悠斗 くんのしたいようにさせてあげた方がいいのか?
少し戸惑いつつ、涙目で悠斗 くんを見上げたら。
「くっっっ……!」
何か堪えるような、短い叫びを上げて俺の両膝裏を持ち上げた悠斗 くん。
まだ夕方の、日が落ち切っていない赤い陽射しが、レースのカーテンの隙間から俺の持ち上がった両脚に光って当たる。
が、それも次第に光を失い、薄暗闇に落ちていく。
後孔に啄むようなキスをしたかと思ったら、熱い舌先がグググッと入り込んできた。
「うわあああああ……。」
目を瞑り、ゾクゾクする感覚をやり過ごす。
そんなところにそんなことするもんじゃないって。
頭の中でそんな言葉がこだましている。
舐められ、良がるオメガの後孔。
蜜がトロリと這い出た気がした。
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