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北條悠斗の嘘

外山雅人くんの話(2) 「ぶっっっっっっっっっっっっっっ。」 あぁぁぁぁ。 ビール噴いた‪w‪w‪w。 綺麗な毒霧となり、俺の含んだビールは、ビールを噴く羽目になった元凶に向かってばらまかれた。 「話がある。」 いつにも増して不機嫌そうな北條の顔が、少し怖い。 珍しく役員フロアに来た北條は、俺を見つけるとそう告げた。 仕事の話かと思ったら、プライベートだから今夜呑みに行かないかと誘われた。 スケジュールを調整し、いきつけの小料理屋の個室を押さえた。 「珍しいな。北條が呑みに誘うなんて。」 「…………。」 「なんか話あるんだろ?」 「………………ある。」 クチが重いので、とりあえず届いた大びん生ビールを小さなグラス2つに注ぎ、乾杯しつつ二人で喉を鳴らした。 「……で?」 促され重いクチを開く北條。 「……お前、優一さんに兄達の話しただろう。」 「……あぁ、そういやしたな。」 「余計な事話すな。」 「うん?三男ての話しただけだせ?家族の事、なんも話してないのか?」 「………………話してない。」 「えぇぇ。」 「それと………………。」 まだなんかあるんか?と、このタイミングで俺は再度ビールにクチをつけた。 「俺の両親、アマゾンに居ることになってる。」 コレ、ビール噴くよな? 噴いても仕方ないよね。 俺、悪くないぞ。 「…………あ?……なんの冗談でそんなことになったんだ?」 クチからぽたぽたビールの雫を零しながら訊いた。 「……う。」 「てか、そんな話、信じる奴居るんか!?」 「……信じてるみたいだ。」 「ま、じかよ。」 「……だからお前に口止めしとこうと思って。」 「アホか!正直に話せ!」 「……う。」 「う。じゃない!」 「………………。」 あ、嫌がってる。 相変わらず、わかりやすっ。 いやいや。 結婚した相手に家族紹介してないとか。 ないわー。 ドン引くわー。 北條んちなら尚更大事な話だろうに。 「……どうしよう。」 「知るかよ!アマゾンとか…どのクチが言うか!」 北條の両頬を抓りあげた。 「いでで…。」 「ちゃんと優一さんに謝れよ!」 「…………うん。」 嘘ついて、見抜いて貰えないまま信じられて。 北條もホントの事、言い出しにくくなったんだろうな。 でもお前が悪い! 「とりあえず俺からはなんも言わないから、安心しろ。でも、早いとこ謝って、ホントの事言えよ?」 「……ありがとう。」 料理を何品か、生ビールを2本ずつ呑んで、今夜は早めにお開きにした。 小料理屋の店主には悪い事したが、騙されてる優一さんを思うと北條には早く帰ってやれよと思う。 今度は心置き無く美味い酒奢れよ。 さて、優一さんに謝る日はいつなのか。 早い内に謝んないと、謝りそびれるぞー? 外山雅人くんの話(2) 北條悠斗の嘘 END

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