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4, 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の後悔

 昨日教えてもらった事件の衝撃で授業がほとんど頭に入らなかった。そろそろ本格的な高校の授業内容に踏み込んでいくからなーという先生の声が右から左へ抜けていく。どんな話が聞けるのか。もうBL展開に萌えたいとかそんなのじゃなくて、ただの好奇心だ。上の空だったのがバレて先生に何度も当てられた。恥ずかしい。  放課後、部室に行くと他の二人と、先輩と、部長がいた。無かったことになった記事の内容に踏み込むから、部長に許可をもらっている最中だったらしい。部長は困ったように笑って許可し、「別に許可とる必要ないだろ」と言って取材しに出ていった。  「オッケーもらったから話すか…そうだ。何か疑問点あった?そこから話そうと思ってるんだけど」  マネージャー専用席に座った先輩に、書き出したメモを渡そうとしたら止められた。  「そこで言って。会見席の質疑応答みたいな感じで」  と笑う先輩。結構な無茶振りだと思う。誰も言い出さないから、とうとう手を上げてしまった。  「一番右の君、どうぞ」  「質問させていただきます。風紀委員長は寮の無人部屋で衰弱状態で発見されたとのことですが、失踪してから発見されるまでの期間中はどのように生活していたのでしょうか」  意外とノリノリで言えた。隣から笑いをこらえる声が聞こえる。  「いい質問ですね」  某ドラマの刑事っぽい言い方をされて口に力をいれた。笑っていいのか。隣が吹き出したから俺も笑えばよかった。  「昨日の話を聞いていたら、絶対そこが引っかかるよね」  隣の隣が同意してくれた。先輩も頷く。  「だよね。確か、二週間近く行方不明になってたんだ。もし転校生から逃げ回ってたんだとして、購買部でも食堂でも見かけたという話はなかった。そしたら、食事はどうしてたんだ?となる」  頷く。隣も隣の隣も頷いた気配がする。  「そんな時に考えるのは食事を用意した協力者がいたんじゃないかということ。でも衰弱していたんだ…となって思いついたのは、監禁されていたのではないかということだった。そして当たってしまった」  絶句する俺達を見ていい笑顔の先輩。いい性格してる。  「それじゃあ話すぞ。知っちゃったこと全部」

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