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牽制

 いない時はたいてい空き教室に相手を連れ込んでことに及んでいるのだ。  済んだ後に乱れた制服のまま現れた事もあった。  そんな園田が指導を受けない理由は、成績が『学年2位』でA寮長だからだ。A寮は園田崇拝者が多い。園田を叩こうものなら、反発する生徒が出ることは目に見えている。  卵焼きの無くなった弁当の蓋を閉めて、床の上に置くと膝を抱えた。  今日は誰も……抱いてない。  そのことだけで僕はほっとしたのだ。  園田に知れてはならない想いに蓋をした。  園田への禁忌。それは『恋』。  恋仲になった途端に園田は冷める。  身体だけの関係。遊びの関係。それだけだ。  それ以上踏み込むと園田は途端に冷める。  それを何度も見てきた。冷酷なまでに園田は切る。 『俺を満足させられたとでも思ったのか? その身体で』 『金払ってもらいたいぐらいだ』  いくつも聞く冷酷な言葉。  自分が言われたら……僕はきっと心が折れてしまうだろう。  密かに育てて、すでに自分の全てであるこの想いを否定されたら。  僕は………。  午後の授業も終わり待ち合わせ場所に向かっていると呼び止められた。  放課後の人気の無い教室の廊下。西日が当り、辺りはオレンジ色の光に満ちていた。 「あの……と、桃香先輩と付き合ってるって本当ですか?」  何度も聞かれるこの質問。  こんな質問をしてくるのは高等部からの外部入学者だろう。襟につけられた校章を見るとC寮の1年生だと分かった。   「どうしてそう思うのかな?」

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