8 / 139

牽制

 ベタベタと引っ付きたがる。  一臣は容姿がいいだけにすごくモテる。だから恋人……らしい人はいなくもなかったけど、一臣自身が壁を作っていて長くは続かなかった。 『きっと、恋でもすれば変わるよ』  弘敏が言っていた。『梓もね』とも。 「泊まるかも」  返事をしてまだ肩に顔を乗せている一臣の頭をぽんと叩いた。  この会話だけを聞くと、恋人を待たすような内容だけど、僕たちはそういう関係じゃない。  一臣はきっと気が付いているはずだ。  ただ、確認されたことも、したことも無いから確証は無い。  僕の恋については。 .

ともだちにシェアしよう!