12 / 139
『崩れる均衡』
「離せ」
振り解こうと暴れたが全く動じない。それどころか、園田は反対の手に持っていたカードキーを奪い取ると、部屋番号を確認して中に入っていこうと歩き出した。
「いい加減にしろ。ふざけるな」
「なんであんなオヤジはよくて俺はダメなんだよ。どうせ寝るんだったんだろう?」
「え、あ……」
園田の勘違いに気が付いて、園田が僕の噂を信じていることに少なからずショックを受けた。
そう望んで行動しているのは自分なのに。
だから、そう振舞わなければならない。
園田はどうするだろう。本気で僕を相手にするだろうか。
歩き出す園田に引かれていたのを追い越して、その手のカードキーを奪った。
「園田は子どもだからね。僕が相手にするわけ無いだろう?」
強気に下から煽り見た。園田は足を止めて僕を見下ろすと、「大した自信だな」と僕を睨み返した。
「僕の好みは年上なんだよ。年下なんて満足できないだろう?」
「さすがは女王様。でも、俺には通じない。俺のテクで満足させてやるよ」
園田は降りてきたエレベーターに僕を押し込むと壁に僕を押さえつけた。
「な、何するんだよっ」
「まあ、そういきがんなって。俺だって数こなしてんだから……たまには同い年でもいいだろ」
掴まれた腕を背中に押え付けられて痛みに顔を顰めるが、体格差もあって逃げられない。
「本気かよ」
「ああ。女王様がどれほどのものか試してやるよ」
園田は押さえつけたまま僕の項に口付けた。そのまま舌を這わされて、その滑った感覚にぞぞっと鳥肌が立った。
ともだちにシェアしよう!