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『崩れる均衡』

 着ていたシャツを脱いで脱衣所のハンガーにかけた。  シャワーを浴びたいなんて言ったけど、この『今からする』っていう準備時間を与えられて余計に緊張してきた。  シャワーを浴びてそこに置かれていたバスローブを身に付けた。濡れた髪のままタオルをかぶって顔を隠すようにして脱衣所から出た。  園田は僕を押し倒したベッドに寝転がったままだった。 「交代。俺も浴びてくる」  すっと起き上がると僕の横を通り過ぎ……るのを止めた。 「……そのままでいい」  これ以上待ち時間を与えられると逃げ出してしまいそうだ。部屋から園田の姿が見えなくなった途端に部屋から飛び出しそうだ。  電気はまだ点けられていない。 「まあ、出る前に浴びてきたからな」  踵を返すと僕の背中から抱きついた。抱きついて、頭にかぶったタオルを取り、項に口付けをした。  ゾクゾクとした感覚がそこから広がる。どこにどうしていいか分からない両手。立ちつくしたまま動けない身体。  スルリと前で結んだバスローブの紐が解かれる。 「いい香りだな」  耳の後ろでスンっと鼻が鳴る。鼻先を耳の後ろに押し付けて髪を鼻でかき上げるようにして擽る。  解かれたバスローブの前を肌蹴させて、背中から抱きついたまま両手がウエストに回された。  裸の肌にその大きな手が滑る。 「そ、園田……」  やっぱり辞めようと言葉にしたいのに緊張に声が張り付いて出てこない。  それどころか、ウエストに回されていた手はスルスルと肌を撫でてそこにある存在意義を問うような桃色の粒を上からなでた。

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