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『崩れる均衡』

 項をくすぐる口付けを繰り返しながら両手がその桃色の粒を摘んだ。 「あぁ……」  思わず洩れた声に「感度いいのな」と呟いた。 「やっぱ、お前いいわ」  艶を帯びた低い声が耳を擽る。降ろしていた両手は摘み続ける園田の両腕を掴んだ。キュキュッと摘まれる度に身体が跳ねて、前のめりに身体が倒れる。  そのままうつ伏せに目の前のベッドに押し倒された。するりとバスローブが脱がされた。  その馴れた仕草と官能的な雰囲気に呑まれて抵抗することも忘れて、目の前のシーツを掴んだ。 「色白いなぁ。痕付けると目立ちそうだよな」 「バカっ、痕なんか付けるなよっ」  慌てて否定して振り返ると、ベッドに肩膝を付いてのし上がった園田が自分のシャツを脱ぎ捨てたところだった。  僕よりも長身でガタイのいい園田。寮が違うから園田が脱いだところを間近で見る事は無かった。真夏に体育の授業の後に水道で身体を流しているところを遠くから見たことはあった。だけど、あまりの肉体差と幼い自分は正視することが出来なかった。 「痕、付けたら困るのか」  その身体が近づく。うつ伏せた僕の両側に両手を付いて、『チュウッ』っと音を立てて肩に吸い付いた。バタバタと暴れて離れる。肩を見ようと首を動かしても確認できない。 「慣れてるってならいくつか痕があってもいいのにな。ご無沙汰か?」  意地悪く笑って、「肌が白いとやっぱり映えるな」と呟いて、痕を付けたのだろう場所に指を這わせた。  ご無沙汰物何も……初めてのことなのだから、痕なんてあるはずがない。

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