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『崩れる均衡』
「授業とか困るだろう。寒い時は風呂に入りたいから、痕は付けさせてない」
強がってそう言うと、「寮の風呂なんか入ってるのか?」と驚いたように聞かれた。
「シャワーは寒いから」
寮の部屋にはシャワー室しかない。湯船に浸かりたい時には共同浴場の方に行くのだ。冬は寒いからそっちを使う方が多い。
「他の寮生と一緒にか?」
何でそんなこと聞かれるのかと疑問に思って、「共同だからね」と言い返した。
「この裸晒してるとか、犯罪だろう。よく襲われないな」
そういうことか、とようやく気が付いて、「一臣と一緒だし、消灯過ぎに入ってる」と答えた。
「僕が入ってもみんなが困るみたいでね」
強気に言い返すと、「煽るのは旨そうだからな」と園田は渋い顔をした。
「そうだよ。僕は女王様だからね」
慣れている振りをするんだ。園田を誘って、僕のものにする。今夜だけ。今夜一晩だけ。
仰向けになると園田の首に両腕を絡めた。震える指先はギュッとその肩を掴んで誤魔化した。
「期待に添えられれば光栄です」
園田は意地悪く笑うと、僕の首に顔を埋める様にしてキスを施した。首から鎖骨、胸にキスを落とし、さっき感じた桃色の突起を唇で挟まれた。
ビクッと身体が反応する。
反対側は指の腹で回すように刺激される。
初めての感覚に翻弄されそうになって、園田の肩に回した手を離し、拳を握って掌に爪を立てた。
翻弄されちゃダメだ。流されちゃダメだ。
自分に言い聞かせる。流されて、翻弄されるとばれてしまう。
どうして抱かれたのかと問い質されて、心を暴かれたら、僕はもう、園田を想う事さえ許されなくなる。
幼い頃から求め続けた園田という存在。
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