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『崩れる均衡』

 今、目の前で僕を求めている。  今夜だけ。なのだから。  唇は更に下がっていき、回していた腕が解かれる。シーツを掴んでも心許なくて、少し起き上がると園田の肩を掴んだ。 「僕もしてやるよ」  言ってはみたものの知識だけで経験なんて無い。どうすればいいかなんて全く分からない。 「乗り気になったのかよ」 「一方的なのは嫌だからね。マグロなんて屈辱だ」 「さすが女王様」  ニヤニヤと笑いながら園田は起き上がって自分のズボンのベルトを外し、パンツと一緒に脱ぎ捨てた。薄暗い室内だからはっきりとは見えないが、まだ反応を示していないそれは、明らかに僕よりでかい。 「咥える? 触る?」  何をなんて聞ける状況でも、そんなに初いわけでもない。いやらしく笑う園田を睨みつけて、「どっちがいい?」と笑顔で言って見せた。 「じゃあ、触って、舐めろよ」  ベッドに胡坐をかくように座った園田に向かい合わせに跪いた。  顔を伏せてそこに近づく。暗闇でも分かるそれに手を伸ばして、そっと触れた。初めて触る他人のモノに戸惑いながら握り込んだ。ゆっくりとした動きで上下に擦る。 「園田って、でかいな」 「まだ完全じゃないだろ?」  頭の上から聞こえる声に視線を上げる。手はそのまま動かしながら。上下に擦っていると僅かに芯を持つ。戸惑いながら強弱をつけて擦り続ける。見上げた園田の表情は変わらない。  その反応が面白くなくて、下を向いた。徐々に硬くなっていくそれに唇を近づける。戸惑いと緊張と初めてのことに心臓はバクバクと音を立てている。

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