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『偽りの創造』

 来月には高等部に上がる。高等部に上がれば今まで自由に行き来していた寮同士が規制される。寮長は全学年を通しての成績上位者が選ばれる。  僕と一臣の部屋にはいつものように園田と相良(サガラ)、伊藤(イトウ)、中村(ナカムラ)が集まっていた。それに、園田の連れてきた平岡亮治(ヒラオカリョウジ)と高峰猛(タカミネタケル)がいた。  一臣は園田の連れてきた亮治と猛を避けて、僕を後ろから抱き締めるようにして座って、肩に顎を乗せて、僕だけに聞こえるようにして話をしていた。 「高校寮に上がったら、園田と桃が寮長だよな。お前ら絶対同じ寮にはなれないよな」  亮治がそう言うと、「成績順だしな」と相良が同意した。 「副寮長は誰にするんだよ」 「まだ決まってもねぇこと話しても仕方ないだろ」  園田はそう言いながらも、「カズは?誰指名すんだよ」と一臣に聞いた。  ボソボソと僕にだけ話す。 「僕だって」 「まあ、カズの相手は梓しかいないしな」  相良は同意して、「園田は?」と聞き返した。 「副寮長なんて、自分の好きなやつ指名してヤリまくりだろぉ? 今のC寮の先輩なんて恋人同士って噂だし、園田もやっぱ狙ってるやついるのかよ?」  猛はいやらしく笑って園田を突いた。一瞬僕を見た気がしたのは僕の願望だろうか。園田が誰を指名するのか、僕はかなり気になっていた。 「そういや。園田、この間の相手どうだったんだよ。やったんだろ?」  え? その言葉に僕は園田を見つめた。  亮治が園田に詰め寄る。そんな話題に一臣は眉間に皺を寄せて怪訝な顔つきになった。この手の話をあまりしない僕たちと、そんな話が好きな園田達。普段一緒に話をすることは無い。だけど、どういう訳か今日は違っていた。

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