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『偽りの創造』
一臣がこうやって甘えられているから、僕が甘えたい。何も言わなくても分かってくれるような、包んでくれるような相手がいい。
園田とは正反対の優しい相手がいい。
「アズは我侭そうだもんな~。言うこと聞いてくれる相手かよ~。さすが女王様」
園田が笑って、亮治と猛も笑った。
女王様? 園田のその言葉に引っかかった。
「わ、我侭なんかじゃないよ」
言い返しても園田は、「俺も年上がいいけど。屈服させる方がいいなぁ~。女王様気質なんていいよな」と更にからかって来た。
「なんだよ。梓を屈服させたいのかよ」
亮治が言うと園田は、「ああ?梓は年上じゃねえし、経験無いだろ」と鼻で笑った。
「ああ、でも、梓なら有りかな」
猛が言うと、相良が横から、「梓はダメだって。桃香のだから」と押しとどめた。
「なんだよ。桃香とやっぱデキてるわけ?」
猛が言うと、一臣が「ちがう」と言い返した。
「まあ、どっちでもいいけど」
園田は立ち上がった。
「何、園田今からどっか行くのか?」
「ああ。女王様を捕まえに」
園田が僕を見た気がした。でもそれは気のせいだったのかもしれない。すぐに猛と亮治を連れて出て行った。
女王様……我侭。園田はそんなふうに僕を見てたのか……。
高校に上がると園田はA寮、一臣はB寮に入寮した。僕は一度C寮に入ったが、一臣が副寮長に指名したので、一臣と同室になった。園田は2年から寮長になって、猛が副寮長に指名された。
寮が変わると寮生同士の対立も相まって園田に会うことは減った。
園田がからかって「女王様」なんて呼ぶから……僕は祭り上げられてしまった。
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