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『偽りの創造』

「朝はやっぱり和食だよ。ああ、でもお弁当も和食だよ」  手を合わせてから箸を取る。目に付くのは甘い卵焼き。 「春……卵焼きいる?」 「え? いいんですか?」  目を輝かせて春は期待たっぷりに見つめる。 「うん。僕は甘い卵焼き好きじゃないから」 「ありがとうございます」  皿に移してやると嬉しそうに口に運んだ。 「前の卵焼きの方が好きだったんだけどな」 「A寮のやつ言えばいくらでも食べれるんじゃないか?」  相良がからかう様な口調で言ってきた。 「そうなんだけどね。早朝には届けてくれないだろう?」 「まあな」  いくら僕が女王様と言われて持てはやされても早朝から卵焼きを届けには来てくれない。  朝食を食べ終えると昼食の弁当を受け取って寮の入口で待つ一臣と合流した。 「夕飯後は5階に集合だけど、一臣は?」  周りに他の生徒もいるので一臣は必要以上に近づいて、「俺は今から対策問題作り」とボソボソっと喋った。 「教室?」 「ああ。昼休みの印刷手伝えよ」 「分かった」  僕が返事をすると一臣が離れた。周りを歩く生徒はチラチラとこっちを見て行く。こういう態度が余計に一臣を萎縮させている。誰もが聞きたい一臣の声。一臣も普通に話すようになれば回りの好奇の目も減るんじゃないかと思うが、本人が嫌がるのだから仕方が無い。  教室に入りそれぞれの席に着いた。  僕の席は廊下側の後ろから2番目。まだ暑さの残る9月。窓は全開にされていて、教室の内外も廊下を通る生徒も良く見えていた。 「梓。来いよ」

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