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『偽りの創造』

 4時間目の授業が始まる直前、チャイムの音にかき消されるようにその声は廊下から聞こえた。僕は「行かない」と慌てて返事をしたが、腰上の高さの窓から長身の園田に後ろから両脇を抱えられて引きずり出されてしまった。  前後のクラスメイトは驚いたようだけど、教師がまだ来ていない教室はにぎやかで、僕の声もかき消されてしまった。  園田は僕の腕を掴んだまま廊下を突き進んでいく。 「僕は授業があるんだけど」 「別に必要ないだろう」 「勉強が本分なんだけど」 「俺がみてやるよ」 「一臣より下のくせに」  僕が言うと園田は急に振り返って廊下の壁に僕を押さえつけた。 「痛っ……何の用だよ」  ゴンッっとぶつけた後ろ頭が痛くて抗議するが、園田はお構い無しに上から睨みつけてきた。  両肩を押える手は力が込められていて逃げることも出来ない。 「…ったぁ。離せっ」  抗い続けると肩から手を離して、後ろ髪を握られた。 「なんだ、昨日は一臣のとこに帰ったのかよ」 「どこだっていいでしょう。毛が抜けるから離してよ」  園田の掴んでいる手を両手で掴むと反対の手で、両手を一纏めに掴まれて壁に押え付けられた。 「まぁ、関係ねぇけどぉ」  呟いて僕を押さえつけた壁の横の扉を開いた。そこは第一理科室。普段使われてはいるが、今は誰もいない。  そこへ僕を連れて行くと、実験用の黒いデスクの上に押し倒した。 「なあ、俺の物になれよ」

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