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『新地と譲歩』
「これって、一臣がしてくれたけど、結構大変そうだったんだよね」
何せ天井に張り付くように付けてあった蛍光灯を吊り下げ型に変えるのだから。
「……一臣呼んだらダメだよね……」
ため息を付いてお気に入りのランプシェードを床に置いた。
『コンコン』
ノックされて慌てて部屋のドアを開けた。
「済んだか?そろそろ飯に……何で暗いんだ?」
「ああ………今電気を付け替えてて……」
「電気?」
「………いいんだよ。すぐに済むから。夕飯ね。行くから待って。すぐ準備する」
生徒手帳をポケットに突っ込んで入口で待つ園田に続いた。
食堂での寮長会は僕の紹介とメンバーの紹介だけだった。すぐに終わって食事を終えると園田と部屋に帰った。部屋に入ると電気を点けられないせいで真っ暗だ。
「………園田。お前って電気とか付け替えれる?」
「はあ? 電球なら替えられるけど。何やってんだ?」
「ごめん。明るいうちにすればよかったんだけど、僕じゃ出来ないみたい」
真っ暗では片付けも出来ない。仕方なく園田に頼むことにした。
「わざわざ電気付け替えるのか?」
アンティークのランプシェードを園田に渡すと園田は呆れ顔で、「やってやる」と言ってくれた。起用にシェードを外して電球だけにすると、これまで天井についていた電気器具を外して、園田はあっという間に付け替えてくれた。
「すごいな……」
電気がついてようやく部屋の中が全部見えたのだろう、園田は苦笑いで部屋を見回した。
「手伝ってやろうか?」
「……いいよ」
さすがに入るなと制したから手伝って欲しいとは言いにくい。ベッドの上にも床にも物は散乱している。
「引越しの間だけ特別だ。ほら、そこの棚かせ。組み立ててやる」
「……ありがとう」
素直に従うことにした。園田は笑って「手のかかる女王様だな」と呟いた。
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