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『投石』
場所の提供なんて保健医がいていい言葉じゃないだろうけど、園田は常習なのだろう。その言葉に少し胸が痛む。
言いながら引き寄せた枕に顔を埋める。
「寮まで帰れる?」
「もう大丈夫」
ゆっくりと起き上がって、「お世話になりました」と保健室をでて寮に向かった。
寮の部屋に帰ると園田の姿は無く、「やっぱりどっかに行ったんじゃないか」とため息を付いてシャワーを浴びて、寮長会を兼ねた夕食を食べに食堂に向かった。
園田は少し遅れてやってくると、「B寮からの打診があった」とB寮の副寮長奪還について話し出した。
次の中間テストでA寮の平均点をB寮が10点以上上回ったらという条件。これから全寮長で話し合いをすらしいが、「受けてもいい」と園田は返事をして来たと言った。
受けてもいい……。それは僕に元の寮に帰ってもいいってことだろうか。
そろそろ僕に飽きたってことだろうか。
一臣のところに帰ってもいいって……一臣に敵対しているから僕をここに呼んだはずなのに。
園田の言葉は僕の心に波紋を広げた。
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