56 / 139
『広がり続ける』
「嫌だっ」
園田を押し退けた。押し退けた拍子に園田の背中が『ドンッ』と激しく体育倉庫の扉にぶつかった。
「ってぇな」
園田は言いながら起き上がって、「何だよ。急に」とぼやいた。
昨日の寮長会での『受けてきた』と言った園田の言葉に僕は大きなショックを受けていた。
「今日はそんな気分じゃないんだよ」
「気分なんて聞いてねぇよ」
園田は僕を積み上げられた体操マットの上に押し倒した。
薄暗い体育館倉庫。普段使われていない第二体育館に園田に連れて来られたのだ。第二体育館は放課後でも部活は行われていない。積まれたマットは湿気を帯びていてかび臭かった。
「嫌だって。こんな汚いところ」
「机の上はいいのにマットの上じゃ嫌なのかよ」
園田は僕のシャツのボタンを外そうとするけど、僕が暴れるからなかなか思うように外せなくて、グイッと力任せに引っ張った。
シャツのボタンが2つ飛んだ。
「園田っ。やだって言ってるだろ」
足掻いて園田を蹴った。痛かったのだろう腹を押えて、「分かったよ」と言うと起き上がって扉の方に向かった。
『ガタンッ……ガタッ……』
園田は扉を開けようとガタガタ音を立てるが、「あかねぇ」と呟いて蹴ったり体当たりしたりした。
「……マジであかねぇんだけど」
「え……」
マットから降りると扉まで駆け寄った。
何度引いても、押しても扉はびくともしない。
「さっき、俺がぶつかった時に鍵でもかかっちまったのかな……」
ともだちにシェアしよう!