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『広がり続ける』
「え、僕のせい?」
「お前、携帯は?」
携帯はカバンの中に入っている。カバンは教室に置いてきた。
「教室のカバンの中。園田は?」
「俺はここに……」
ケツポケットから携帯を取り出す。暗い倉庫の中で青白く画面が光った。
「猛呼ぶか」
携帯を弄って耳にあてるのを見上げていると、「大丈夫だ」と言って頭を撫でられた。
「……あれ?……え?」
園田が携帯を耳から離して画面を見ているので覗き込むと画面がフッと消えた。
「え? 何? どうしたの?」
「やべぇ。充電切れた。昨日充電し忘れてて、切れかかってたんだよ」
携帯のボタンを何度も押して園田は少し慌てていた。
「誰か気づいてくれるかな」
不安になって園田に尋ねると、「寮長会に2人とも出なかったら探しに来るだろ。それにお前のカバンが教室にあるなら不信に思うだろ」と言われた。
園田は扉横の壁を触って何かを探している。
『パチン』っと音がして天井の電気がついたが、切れかけているのかオレンジの明りがちかちかして鬱陶しかった。
「明りが点いた方が見つかりやすいだろうからちょっと我慢しろ」
「……うん。ごめん。園田」
僕が突き飛ばしさえしなければ鍵はされなかっただろう。機嫌の悪そうな園田に謝ると、「俺が連れてきたのが悪かったんだ」と頭を撫でられた。
解かれたネクタイを渡されてシャツのポケットに押し込んだ。
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