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『焦れる』
3日目になるといつ来るかとそわそわして廊下を伺ってしまう。
休み時間のたびに廊下に気配を伺う。
一臣は新しく入ってきた比嘉響君とは本人曰く、うまく行っているようで、機嫌がいい。ただ、僕を奪還するために行われている勉強会でいざこざが起きているからその対応に一臣は忙しいらしい。
「僕はB寮に帰らないよ」
「ならなんで毎晩電話して来るんだよ」
「出ないじゃん」
あの日から毎晩電話をかけていた。だって、園田が帰って来ないから。放課後、どこに行っているのか、夕飯を兼ねた寮長会まで姿を現さない。
寮長会後もいつ帰って来ているのか気配が感じられない。ただ、朝出る時には靴が入口にあるから帰って来ていることは知っていた。
避けられていると自分でも分かっている。でも、その理由が分からない。
僕はまだ好きだと告げていないのに、避けられる理由が分からない。
嫌われたのかもしれないと思うと苦しくて、真夜中に一臣に電話をかけた。
「そんなに園田が嫌いなら帰ってくればいいだろ」
「……僕じゃないよ」
嫌われているのは僕の方だよ。誘いにも来ないんだから。
2日と開かなかったのに。
ああでも、今園田に誘われてもきっとやらないだろうな。
嫌いだって言ったし……。
俯いた頭をぽんと叩かれた。
「一臣。慰めはいらないよ。電話した時にちょっとだけでも出てくれればいいからさ……」
叩いた手は頭の上に乗せられたままだからそのまま机に突っ伏した。
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