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『焦れる』
「……一人って寂しいじゃん」
これまで2人だったのに、2人部屋なのに一人ってすごく寂しい。
一人部屋になったことが無いから余計に。
「何だよ。相手いねぇのか?」
「えっ……園田っ?」
ビックリして顔を上げると僕の頭に手を置いていたのは廊下から覗き込んでいる園田だった。
「な、何でいるんだよ」
慌てて手を振り払った。向かい合って座っていた一臣は手に書類を持って椅子から立ち上がっていた。
「ちょ、ちょっと一臣。どこに……」
『職員室』と口ぱくで言って出て行ってしまった。
「梓。付き合えよ」
「嫌だよ。午後の授業がもうすぐ始まるでしょ?」
「そんなの気にするな。来い」
「僕は用事もあるし、付き合わない」
机の中から図書室の本を取り出して胸に抱えると園田を無視して教室を出た。後ろからついてくる気配を感じて早足で図書室に向かう。
教室棟に隣接した円形の2階建ての図書室は本も充実しているから利用する生徒も多い。
「何でついて来るの?」
「俺はどこだって構わない」
「何を言ってるのか分からないなぁ」
カウンターに本を持っていくと、司書に、「この間探して本が返却された」と告げられてカウンターの中を探してくれた。
「あれ? このあたりに置いてあったんだけど……委員の子が片付けたみたい。ごめんね。棚を探して」
「分かりました」
頷いて振り返ってそこにまだいた園田にぶつかりそうになった。
「付け回さないでよ。他にも相手はいるんでしょう。僕はもう園田の相手はしないから」
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